町工場を見学した話

先週縁あって、葛飾区、荒川区、墨田区、足立区にまたがるいくつかの町工場を見学するツアーに参加してきました。その後の交流会なども含めてすごくいい時間だったので、珍しく具体的なレポ的なものを書いてみようかと思いました。 →参加したのはこちらのTASK工場見学ツアー

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ここ最近たまに町工場を見学させていただく機会が重なっているのですが、この日も目から鱗をあたりにポロポロと撒き散らしながら歩き回りました。私が参加したのは「金属・樹脂コース」。

(株)ミヨシ(プラスチック射出成型・金型製作。メーカー試作品など小ロット製造に強い)

石川金網(株)(金網・パンチングメタル加工。工場設備や食品機材のほかに金網折り紙などの自社製品開発も)

(株)日興エボナイト製造所(硬質ゴムエボナイト製造加工。楽器のマウスピースや万年筆などの自社製品開発も)

東日本金属(株)(砂型による鋳造・加工。歴史建造物の金物復元や窓や戸の金物などを中心に幅広く製造)

見させていただいたのは、とても活気ある工場ばかり。時代の流れによって需要が縮小していった商材であっても、自社製品開発を進めて広めている工場と、求められたものをいかに完璧に形にするかの試行錯誤に心血と情熱を注ぐ工場と。根底に流れるものは共通していながらもそれぞれの強みがあって、個人の力だけではなくそこに集まる一人一人の知や技術の結集が形になるという流れを目の当たりにすると、人間ってすごいな、という根源的な感動すら覚えました。

人間ってすごいなあと感動しながらも、やはり元気な工場であるからこその自動化、新しい機械の導入にそれぞれの工場が取り組んでいる流れも見られまして。職人さんの力に頼っていた部分を、機械でもできるようにするというのは必然的な動きだとは納得しつつも、どこかで、「じゃあ今まで職人さんがやっていた技術はどこに行くの?もう受け継がれなくなるのだろうか?」という疑問と身勝手な寂しさがこみ上げてきまして。ちょっと気になったので最後の意見交換会で質問してみたのですが、それぞれの工場の方からすごくいいお答えをいただいたので書かせてもらいます。

(株)日興エボナイト製造所さん:「右肩下がり産業だった業界のなかで、自社で商品開発を進めるようになり、それを制作するために必要な工程を機械化できるように導入を進めた。しかしボタンを押せばオッケーというものじゃないんですね〜。機械をいかに使って再現するかというところにまた技術が必要。その機械を使って商品を生み出せる工程には模索が必要であり、それは個人ではなくチーム力が必要となってくる。」

東日本金属(株)さん:「職人さんの技術は絶対に必要。例えば研磨技術など、職人さんから職人さんへ受け継いでいかなければいけない技術があって、追いついていない部分もある。今まで作れていたものを、職人さんの不在でつくれなくなることが一番困るので、そこに手を打つ必要がある。若い職人に熟練職人さんたちが継承していってもらう技術は業界で守っていかなければならないし、技術を失わないためにも、職人なしでも機械で作っていける技術も同時に作っていくのもミッションのひとつ。」

(株)ミヨシさん:「特に考えなくてもいいような作業については、どんどん機械化するようにしている。ただし、たとえば自分で使う刃物を作る作業といったことは積極的に新人にやらせる。そうすることで、自分の作った刃物が使えるかどうかを考える機会になり、その原理がわかるようになる。そういう仕組みが見えるようなところは意図的に自動化させないようにしている。」

有限会社篠原刀型さん(革製品加工):「自分が数十年、熟年数をかけて習得した特定の技術がある。その技術をその年数をかけて若い人に伝えていく、その技術継承の時間と経費がないのが現実。昔と今では社会事情が違う、型代を気にせず大量に作ればよかった時代があった。今は小ロットが多く、型代が売値を超えてしまう。技術が失われたとしても、機械によってそれにかわるものや近いものを新しく作ることは可能だと思う。ただし、直せる手がないので修理はできなくなる。部品もなおせないので新しくつくるしかなくなっていくと思う。」

機械を使うにしても人の手は介するわけで、人が作っていたものを機械に作らせるまでにはそこの制御が必要になるし、やっぱり人間にしかできないものはあって時間をかけて受け継ぐことを諦めない、やり続ける人たちもいる。便利なものは効率よく使うにする。一方で、それを長年続けてきた人にしかできない技術が、町工場ごと、あるいは商材・素材に及ぶ大きい単位で、あるいは特定の工程をさすような小さい単位で、日々失われているのも事実なのだなあ。

現在自宅ひとり工場状態の私。うまくクロスして形にできるように、この日目にした、耳にした一つ一つを引き出しの浅いところに置いておくことにします。引き出すのが楽しみ。

そして活版印刷や印刷工房が併設されている「co-lab墨田亀沢」が素敵すぎました。興味津々です。